[ 全体 ]
この作品は、ちゃんとした小説です。
オンラインノベルで、「プロになりたいです」とおっしゃっている人たちの中で、本当に小説になっている人って少ないと思います。
会話文しかないとか、描写が擬音だけとか、意味なく顔文字で感情を表していたりします。商業で売るというのは、一般的に売られている小説を読むのが好きな人が買うという、特殊な人たちを対象にした商売ですので、ちゃんと文章が書けていないとダメなんです。
その点、この作品は完璧です。主人公がどこにいるのかわかる程度に地の分があり、会話文があります。
応募する賞がライトノベルというのを意識しているので、一般的なライトノベルの雰囲気があります。
さらっと読めて面白い小説です。
[ 気になったところ ]
ご本人もおっしゃっていましたが、敬称が違いますね。王様に対して「殿下」と呼んでます。
[ この作品の面白いところ! ](ネタバレあり)
伏線の回収が漏れ無く行われています。特に、左肩に留められている不死鳥の赤い羽根と、ジークの左肩を抑える仕草は、最後の方まで読んで「おおっ」と思いました。
医療風景描写が妙にリアルです。ファンタジー小説だとわりとさらっと流しがちな部分なのですが、医者が関わってくる話なので、リアルな描写は話に深さがまします。
国の仕組みがリアルなところです。竜に街が襲われた → 国力減らない みたいなファンタジーな世界が多いのですが、この作品はどうなるのか、ちゃんと書かれています。
[ なんで賞が取れなかったのか? ]
作品は、面白いです。文章も、ライトノベル小説によくある、短文が重なっていくような書き方をしているので、ライトノベルの読者層には好まれると思います。
さらっと読めすぎてしまうところなんでしょうか?最後のシーンまでさらさらっと読めてしまいます。
ハッピーエンドで、次の物語を想像させる終わり方なのですが、あんまり印象に残りません。こういうのって、もっと一段落しました!みたいな描写がないと終わった気がしないのかもしれません。
うーん……あとは、なんでしょう。主人公のアメリアとジークの心通わせるシーンがさらっとしているところでしょうか?
ピークの持って行き方は、二つあると思います。まず、主人公たちの心情描写のピーク。そのちょっと後あたりに、行動のピークがあると最後に向けて、話が転がっていくと思います。
主人公たちの心情描写のピークは、前述のアメリアとジークの心通わせるシーンだと思います。行動のピークは、アメリアが竜と戦うシーンでしょう。竜と戦うシーンは派手で、盛り上がっています。それに合わせて、心情描写のピーク部分も少しだけ演出を増やすともっと盛り上がった感じがするかと思いました。
あくまで、個人的な考えですが……。
[ 余談 ]
ここからは、余談です。Twitterのつぶやきを拝見しているだけなのですが、すごーく「この人だ」という雰囲気がでている気がします。このつぶやきなら、この文章でこの話だというのがなんとなく伝わると言いますか。
よく、登場人物は作者の分身と言いますが、アメリアとジークは間違いなく分身ですよ。
高遠 夕さん原稿ありがとうございました。
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